きみにしかかけない魔法



それ以来、水羽くんを見かけるたびに、目で追いかけてしまう。


そうしているとすぐに気づいたことだ。


そっくりでも、水羽くんと桃葉くんは全然違う。

たとえば並んで立っているだけでも、私は絶対に間違えない自信があるもん。



「……?」



口ごもった私に不思議そうに首を傾げる水羽くん。


言えない。さすがに言えない。

あなたをモデルに恋愛モノを描いています、なんて……!




「な、なんでもないよ」

「ふうん?」



探るように、じーっとこちらを見つめていた水羽くんだったけれど、かたくなに首を横に振る私に、しばらくして諦めてくれた。


代わりに。




「読みたいな、それ」

「えっ」

「紫奈が描いたやつ」




水羽くんが指差す先は、私が手にしている例の紙束。


慌てて首を横にふる。




「だ、だめっ!」

「なんで?」

「か、まだ描きかけだし……中途半端だし……」



ぎゅう、と胸の前で隠すみたいに抱え直す。


それに、ヒーローのモデルは水羽くんだし、と心の中で付け加えた。



そんなことはつゆ知らず、水羽くんは「じゃあ」と口を開く。