きみにしかかけない魔法



「ハンブンコ、してるみたいだね」

「ハンブンコ?」

「うん、この飴さ、半分こしてるみたいじゃない?」



ハンブンコ、という言葉に慣れていなくて、カタカナで捉えてしまったけれど。

半分こ、と頭の中で変換して、顔がかあっと熱くなった。


水羽くんにとっては、きっとなんてことのない普通のこと。だけど、私にとっては滅多にないこと。


誰かと時間を共有したり、こうして食べ物を分け合ったり、半分こって、素敵な響き、考えたことがなかったよ。



ずるいな、ずるいね、ずるいよ水羽くん。




「──水羽くん、」

「うん?」

「わたし、水羽くんのこと、」

「みーずはー!」



私の声にかぶせて飛んできた明るい呼び声にハッと我に返る。

わたし、今何を言おうとしてた?




「うわ、うるさいのに見つかっちゃった」

「え、」



水羽くんが怪訝そうに眉をひそめたのと、理解の追いついていない私が間抜けな声を出したのはほぼ同時。


そして次の瞬間、ひょっこりと男女数人のグループが顔を出した。