きみにしかかけない魔法




「蜂蜜林檎ののど飴。水羽くんにあげる」

「え、ふたつも?」

「あ、いらなかったら全然いいんだけどね、あの、喉痛いのって結構しんどいかなあって思って、」



ぽかんとする水羽くんの顔を見て、やってしまった、と思う。


どうしよう。思いつきでこんな飴玉を差し出してしまったけれど、よくよく考えれば、私なんかのスカートから出てきたものなんて食べたくないよね。

なんてことをしてしまったんだろう、大失態だ。



「ふ、はは」

「へ、」

「なんでそんなに焦るの、紫奈ってやさしーね、ありがとう、すごいうれしいな」



笑いながら、私の手のひらから一粒のど飴をつまむ。



「でもふたつは悪いから、ひとつちょーだい。そっちは紫奈の。ふたりで食べよー」



ああ、全部、水羽くんには敵わないなあ。



こんな風に私の胸を高鳴らせるの、水羽くん、この世界できっときみしかいないよ。

どうしようもなく、惹かれてしまうよ。

全部水羽くんのせいだよ。



「ありがとう……」

「変なの、お礼言うのは俺の方だよ?」




わらってのど飴の袋をあける水羽くん。わたしもまねしてのど飴を口に放り込む。