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「紫奈―、そろそろ出来上がる?」
「え、っと、まだだよ」
「えー、はやくよみたいのになあー」
私の描く漫画を、ほんとうにきらきらとした瞳で見つめてくる水羽くん。
誰かにこんな風に期待されていたことなんてないから、なんだかくすぐったい。
それに、これを描き終えて、水羽くんに渡してしまったら……。
私の気持ちも全部伝わって、この大切な時間が泡のように消えてしまうんじゃないかって、わたし、こわいんだ。
「……水羽くん、もしかして喉、いたい?」
「え?」
突然のわたしの言葉にきょとんとする水羽くん。
「少しだけ声がかすれている気がしたんだけれど、……気のせい、だったかな」
一瞬、驚いたような顔をして。
それから口元に右手を持ってきて、照れたように笑う。
「びっくりした、実は朝からちょっと喉いたくてさー」
「ちょっとまってね、」
ごそごそとスカートのポケットを漁ると、2つぶコロンと飴が出てきた。
絵を描くとき、口の中に何かがあった方がはかどったりするの。



