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水羽くんは私にとって魔法使いだ。
お昼休みはもちろん、それ以外の時間でも。
教室移動中の廊下や、他クラスの体育の授業、学年集会に登下校中……気づけばいつも水羽くんのことを探している私がいる。
人気者で、格好良くて、人懐っこくて、誰にでも優しい。
そんな輪の中心にいる水羽くんが私とお昼休みを過ごしているなんて、殆ど奇跡に近いことなんだ。
そう、だからね。
『ウソ、まさか若月さんが?』
『いつも暗いし、そんな風に見えないけど』
『意外とああいうタイプが積極的だったりするんじゃない?』
ひそひそと、聞こえる声でささやかれる言葉たちは、仕方ないこと、なのかもしれない。
『水羽が相手にするとは思えないよ』
『誰にでもやさしいからねーあいつ』
『でもお昼休み一緒にいるところ見た人がいるって』
『本当なのかなー』
ああ、まただ、と思って、耳を塞ぎたくなってしまう。
でもそんなこともできなくて、ただ机に座って、じっと下を向いているだけ。厚いめがねが私を守ってくれている気がするけれど、盾はそれだけ。
あのね、わたし、本当はそんなにつよくないよ。
“下ばかり向いていて、暗くて怖い”
そんな風に思われているわたしが、水羽くんのようなきらきらした人と一緒にいること、不釣り合いだって自分が一番よくわかってるんだ。わかってるけど……。
だけどね、わたし、水羽くんへの想いだけは、誰にも譲れないって、そんな風に想ってしまっているんだよ。



