きみにしかかけない魔法



「紫奈は暗いとか怖いとか、思ってる?」

「ううん、全然」

「じゃあ、そのままでいーじゃん」

「……え」



目を見開いた。


驚く私とは正反対、水羽くんはいつも通りの笑顔を浮かべている。


あまりにも、あたりまえのように言うものだから、私が悩んでいたことが不思議に思えてきてしまう。



たった一言で、そう、それはまるで。




「だって似合ってるし可愛いしー」

「……水羽くんの言葉って魔法みたい」




とん、と軽く背中を押されたような気持ち。

大切にしたかった私の世界、だけど、自信がなかった。



私の世界を肯定してあげられるのは私しかいなかった、そこに水羽くんの言葉がひかりみたいに差し込んで、それでいいんだよって丸ごとあっためてくれるの。



心の中がきらきらとした光の粒でいっぱいになる。



魔法みたいって、そう言った私に水羽くんは、あははっ、と声をあげて笑った。



「俺って魔法使えるのかなー」




腕を振るジェスチャー、映画に登場するような魔法使いを真似する動作に、私もつられて笑顔になる。