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水羽くんは宣言どおり、翌日から毎日、昼休みを中庭で過ごすようになった。
ベンチに座り、せかせかと下描きの鉛筆を動かす私。
そのかたわらで、ぼんやりと時間を過ごす水羽くん。たまに、少し会話を交わすくらい。
『あの、退屈じゃない?』
このまえ、気になって尋ねてみたけれど、『ぜーんぜん。むしろ楽しいよ』と返ってきた。
私は水羽くんがいると嬉しいし、水羽くんが何を楽しんでいるのかはわからないけれど、楽しいのなら、よかった。
そうして、水羽くんが傍にいる昼休みも、あたりまえになってきた頃。
「紫奈ってどれくらい、目悪いの?」
かけたメガネ、分厚いレンズのその向こう、水羽くんがふと気になったという風に首を傾げて覗き込んでいる。
水羽くんの投げかけてくる質問は、だいたい前触れがない。
きっと、気になったらすぐに確かめたくなる性分なのだと思う。
「うーん、かなり悪いよ」
試しにメガネを外してみる。
途端に視界全体がすりガラスに覆われたようにぼやけて、滲んだ。霧の中にいるみたい。
この距離でも、水羽くんの姿がはっきりとしないくらいだもん、相当だよ。



