余裕なきみにチェリーランド




――――ガラガラッ

久しぶりに訪れた美術室、その扉を何のためらいもなく勢いよく開ける。


「桃葉くん!桃葉くん、いるっ!?」

「……っ、紡ちゃん?」


窓辺の方、ぽつんと座るその背中が微かに震えて、振り向く。
しばらくぶりに、桃葉くんと目が合った。

ずきゅん、と比喩でも何でもなく、心臓のど真ん中を射抜かれる。


「どっ、どうしよう!桃葉くんがかっこよすぎて直視できないよ!死にそうなのですが!!」

「……は?」

「無理!どうしよう!尊い!」


ここに来るまでの間、どうやって謝ろう、とかどうしたら許してくれるかな、とか頭の中で何を話そうかいろいろ組み立ててみたのに、そんなもの、桃葉くんを見た瞬間綺麗さっぱり吹き飛んでいった。

桃葉くんって、こんなきらきらしてたっけ。こんなに眩しかったっけ。


「わーん、会いたかったー!好きー!!」


本来の目的を忘れて溢れかえる気持ちのまま叫び倒す、と。
「はー……」と盛大なため息の音が聞こえる。もちろん、桃葉くんの方からだ。