余裕なきみにチェリーランド



「桃葉くんが?なんでっ?」

「あは、そっか、春咲さんはわかんない?」

「え、だって……」

「最近、桃葉のこと避けてたんでしょ」

「ええと、まあ、そんな感じですが」


避けていた、というか、引いてみろ作戦というか。


「桃葉、めちゃくちゃ怒ってたよ、春咲さんに」

「え゛!?」

「あれは珍しくガチだったから、今すぐ謝りに行ったほうがいいんじゃない?」

「ま、マジすか……?」

「俺が嘘つくと思うー?」

「思わないッス……」

「でしょ」


にやり、水羽くんが唇の片端を上げたような気もしたけれど、私はそれどころではない。
も、桃葉くんを怒らせてしまった……?

振り向かせるどころか、嫌われてしまっている!? それって本末転倒すぎでは!?


「どどど、どうしよう……!」

「桃葉なら、美術室にいると思うけど」

「美術室?昼休みも?」

「双子の兄が言うんだから間違いないと思うよ」

「それはそうかも……。じゃあ、えっと」

「行ってくる?」

「はい!行ってきます!」


くるり、水羽くんに背中を向ける。
早く、行かなきゃ。桃葉くんのところ。

駆け出した私の背後で、水羽くんが。


「まあ、嘘なんだけどね」


なあんて悪びれず呟いていたことを、私も桃葉くんも知る由はなかった。