◇
「はあー……、桃葉くん……」
廊下を歩きながらも、無意識のうちに桃葉くんのことばかり頭の中を占めている。
思わず、桃葉くんの名前を呟く、と。
「春咲さん?」
「はうっ!?」
いきなり呼び止められて驚いて振り向く、と。
「なんだ、水羽くんか……」
「なんだ、って。桃葉かと思った?」
「や、それはないけど!」
「それはないんだ」
くすくす笑う水羽くん。
うん、その姿はやっぱり桃葉くんとは似ても似つかなくて。
間違えようがないと思う。
だけど。
双子だから、ふとした角度からの表情とか、声とか、どうしてもダブって見えてしまうことはある。そう、少し期待してしまった。紛れもなく水羽くんなのに、桃葉くんをそこに重ねてしまいそうになる。
どこにいても、桃葉くんを見出してしまう、求めてしまっている、そんな自分にほとほと呆れる。
「そうそう、春咲さんにちょっとお知らせがあって」
「え、私に?水羽くんが?」
「うーん。俺からっていうよりー、まあ、ちょっと桃葉に貸し作っとこっかなーって」
「……?」
きょとん、とした私の顔を見て水羽くんが喉のあたりで笑う。
そして。
「桃葉がねー、最近すこぶる機嫌悪いんだよね」



