余裕なきみにチェリーランド



「圧倒的に足りてないのは、恋愛偏差値」

「へん……?恋愛、偏差?」

「そりゃあ、馬鹿正直なところがあんたの良いところでもあるわけだけどさあ」

「ば、馬鹿正直……」


いたいけな乙女のハートに5000のダメージ。
そろそろMPが底を尽きてしまうのだが。

「さすがにひどいよ!」とぷくっと頬をふくらませてみたけれど、もちろんむっちゃんが相手にしてくれるはずもなかった。


「いーい? 恋愛にもスキルってもんがあんのよ」

「スキル?」

「そ。芸術と一緒。いくら感情がこもっていたって、熱量があったって、技術がなきゃ効果的に伝わんないの。まあその逆も然りだけど」


芸術、を引き合いに出されると弱い。
絵を描くときのことを思い出して、なるほど、と納得してしまう。

メモを取る勢いで真剣に耳を傾ける私に、むっちゃんはもったいぶりつつ口を開いた。


「で、恋愛のスキルっていうのは要するにカケヒキよね」

「かけひき?」

「そ。紡は押して押して押しすぎなの。押してダメなら引いてみろって言うじゃん?」


バンッ、とタイミング良く目の前に差し出されたファッション雑誌。
ファッション誌はたいてい、むっちゃんと回し読みだ。

見開きページの真ん中に、どん、と“必殺☆モテテク”の見出し。
ついつい読みこんでしまう私を見てむっちゃんは鼻で笑う。


「まー、それでちっとは勉強しなよねー」