――――『いいね、きみの絵』
絵を描くことが好きだ。昔からずっと好き。
きっと誰に見つけてもらえなくても、誰に褒められなくても、私はずっと絵を描いていると思う。私は私がパレットの上で作り出していく色のひとつひとつが好きだし、キャンバスの上に広げていく自分の世界が好きだ。趣味だもん、それで完結していいと思っていた。
だけどね、あの日あのときあの瞬間、突然美術室に現れて桃葉くんが放ったあのひとことが。
思ったよりもまっすぐに、私の胸のど真ん中を射抜いたの。
いいね、ってきみが言ったから。
私、もっと好きになったよ。もう、なんの根拠もなくても肯定できるような気がするの。
桃葉くんがいいねって言ってくれた私の絵を、私もずっと好きでいられると思う。
――――大袈裟かもしれない。だけど、桃葉くんがいなかったら、私はいつか私のままじゃいられなくなっていたかもしれない。ほんとうに、そう思っている。
「好きだよ、桃葉くん」
好きなの。大好き。
こんなにも大好きだって体が叫んでいるの。
「七原桃葉くん……」



