「大丈夫か?」




「……え?」




思っていたセリフとは全然ちがくて、翠を見てぽかんとした。



膝の上で握っていた手からも力が抜け、緊張してたはずなのに気が抜けてしまった。




「…緋和?」


「はい!?」



「…なんだよ、大丈夫かって聞いてんだよ。あいつのこと…夕方のこと」




なんだ、そのこと…?



少しほっとしてしまった。


何でだろう。でも、さっきのことには触れてほしくない。



謝ってなかったことにされるのも、気まずくなるのも、嫌なんだ。




「…大、丈夫だよ。円香とキクさんのおかげですっかり忘れてたから」




これ以上翠に心配をかけたくなくてヘラッと笑って見せた。