バタバタバタ!!


「…っ、はぁ…はぁ…」




オートロックの自動ドアを抜け、エレベーターに駆け込んだ私はようやく息を整えた。




今まで感じたことがないくらい、怖かった。


疲労が恐怖かは分からないけど、手も足をかすかに震えていた。




ガチャ


「んおー、おかえり。早かったなー」




玄関のドアを開けると、丁度お風呂から出たであろう上半身裸の翠と鉢合わせた。




「あ…う…」




言うべきなのかな。

…ううん、言おい。聞いて欲しい。


でも上手く声が出なくて、私は涙を浮かべて翠を見つめた。




「…緋和?」




私の異変に気がついたのか、翠はバスタオルを放って駆け寄ってきてくれる。


風に乗って翠のシャンプーの香りがした瞬間、私は全身の力が抜けて崩れ落ちた。