「私、門限あるので帰ります。お疲れ様でした」




一刻も早く林先輩から逃げたくて、私は荷物を持ってバイト先を飛び出した。




ちなみに、門限なんかもちろん嘘。

一人暮らしの私にそんなものあるはずがない。

けど、1人で暮らしてることも言ってないから。



「…っ」




普段は日常生活でもまったく走らないのに、林先輩が怖くてつい小走りになる。


だって、あの人…なんか普通の人とは違う気がするから。

どこか纏っているオーラが、空気が、怖いから。




コツ、コツ、コツ…


やっぱり、おかしい。



バイト先を出てから感じていた違和感。



まるで私の後を追うかのように靴が擦れるような足音が迫ってくる。



たぶん、つけられてる…