楠木さんにはぼっちで家族にも見捨てられた可哀想な子供にでも見えてるのかな。


…まぁ、あながち間違ってないけど。




「まぁ事情ありそうだから見逃すけど、その代わり俺が女子大生と合コンしたこととか広めるんじゃねえよ」


「なんだ、それが言いたかったんですか?わざわざ広めたりしませんよ。円香はどうか知らないけど。」




口止めするためだけに私の貴重な放課後を…



帰りにスーパーのタイムセールに寄って家でゆっくりしようと思ってたのに。




「はぁ?なんだとはなんだ!俺みたいな若手の下っ端は生徒の評判が大事なんだよ!」




これだから最近の若者は!なんて呆れ顔でグチグチ言う楠木さんは少しおじさんくさい。


なんて、本人に言ったら怒られそうだけど。




「先生もう既に色々な噂お持ちみたいですけどね。まあいいですよ、じゃあ失礼します。」




何か言いたげに叫んでいた楠木さんを置き去りに、私は1人帰路についた。



──まさか、この後とんでもない事になるとも知らずに。