「緋和、おまたせ!帰ろ〜」


「おかえり円香。じゃあ私帰るね!みんなまた明日」




タイミングよく教室に帰ってきた親友を見つけ、逃げるように私はみんなの元を去った。


これ以上嘘をつくのは辛い。




「まーた嫌味言われてたのぉ?」



「ううん、嫌味なんかじゃないよ。皆はただ褒めてくれてるだけなんだから。」




たとえ褒められてる私が本当の私じゃなくても


私が褒められてる気がしなくても


みんなは、私に悪い思いさせようと言ってるわけじゃないんだ。




「ふうん、まあ緋和がいいならそれでいいんだけどさ?あんまり我慢するのはよくないよ」


「…私一人の我慢で世界が上手く回るならそれでいいよ」


「でたでた、自己犠牲」




円香はやれやれとため息をついた。


“ 自己犠牲 ” は円香が言うには私の悪い癖らしい。


あんまり自覚はないけど。