先輩はまるで本当のことを話しているみたいに私から目を逸らさなかった。なんて言葉を返したらいいのかわからない。全く予想もしていなかった言葉だから、信じてしまいそうになる。
いや、もう、信じても良いのかもしれない。それが嘘だって、ゲームだって、私はきっと、風の前の塵みたいな呆気ない夢であっても、目を瞑って受け入れるはずだ。
傷つけられたっていいと思えるから、きっと恋だったのだろう。自嘲するように笑ったら、先輩がますます眉を顰めた。口を開く。馬鹿になったっていい。先輩になら、騙されたって本望だ。その姿の幻影を追って、のこのことここまでついてきた。私に残された言葉は一つだけだ。
「先輩、すきですよ」
その言葉で全てが終わると知っていたから、絶対に口に出さないつもりだった。私がすきだと言った瞬間に全部が崩れて終わってしまうと理解していたから、何が何であろうと、閉口しているつもりだった。出てしまえば呆気ない。
「だから、はやく見限ってください」
信じるよりも疑う方が簡単だ。私の口から出た言葉に声を失くした先輩の胸を押した。自分の物とは違う、硬い熱を押し返して、びくともしないことに驚く。もう行きますと声をかけようかと逡巡して、耳元に先輩の息がかかった。ため息だと思った時には、先輩の胸を押した手を掴まれている。
「どういう意味?」



