「そう……、だよ。はは、ばかみたいだよね……。楽間くん、知ってるんだよね? 先輩、罰ゲームで私のこと構ってるだけなんだって。それなのに、こんなに好きになって、笑えるよね」


吐き出すように呟いて、また視界がぼやけて行く。先輩のことになると、私は泣きたい気持ちになってばかりのような気がする。先輩が好きだ。どんなにひどいことをされていたとしても、あの瞬間、私の目の前で、柔らかく笑ってくれていた先輩が、どうしようもなく好きだ。


「……そんなに好きなら、罰ゲームでもなんでも、告白すりゃいいんじゃねえの?」

「うん、そうだね……。そう思って待ってたけど、先輩が私のことを「知らない」って言うのを聞いた、ら……、ちょっと、声が、でなかった、かな」


痛々しい思い出に笑って、こぼれた涙を拭った。すきだと言う勇気すらこなごなになった。諦める勇気もないくせに、私は矛盾している。あんなに迷惑そうな言葉を吐かれて、それでもまだ、先輩を諦められない自分は本当に馬鹿だ。辞めたいのに、やめられる気さえしない。


「楽間くんが保健室まで運んでくれたんだよね……。ごめん、迷惑かけた。それと、ありがとう」

「別に……、何、諦めんの?」


痛い言葉が背中に突き刺さって、また涙が出そうになる。それでもぐっとこらえて、顔をあげた。目の前に、真剣な顔をしたクラスメイトがいる。いつも、派手な男の子たちと一緒に居る彼を直視したことがなかった。真っ直ぐに見ると、少し優しい人に思える。そういうことに気が付けたのも、きっと先輩のお陰だろう。