きっと、先輩にとっては、他の女の子たちと何の違いもない人間に違いない。さっき私のことをあれこれ言っていた女の子も、私も、彼にとっては同じレベルなのかもしれない。そう思うと馬鹿みたいに胸が潰れた。急に血液の巡りが悪くなったみたいに苦しくて、息を吐くことですらしんどい。人を想う気持ちとは、どうしてこんなにも重ったるいんだろう。


「バイクです……。わたしも、乗ってみたいなあって」


軽率に息を吸って、単純な嘘を吐いた。先輩のことがすきですきでたまらないと知られてしまったら、この関係は終わってしまうから。だから、私はその気持ちをひた隠して、思ってもいないことを言った。

あわよくば、優しい先輩が、後ろに乗せてくれたらいいのになんて、あるはずもない奇跡を、ほんのひとさじ分夢見て、先輩の瞳を見あげる。

その瞳が、あまりにも優しい色をしているから、恐ろしいくらいに心臓がうるさい。


「菜月、興味あるの? でもまだ17じゃん。免許取れないし、運転できないだろ」

「ああ、そうですね……。じゃあ、誰かの後ろにでも乗ってみたいです」


誰かのなんて言いながら、私が後ろから見つめて居たいのは、あなたしかいない。恋愛なんてやり方も良くわからない私は、小さく告白するだけで精一杯だ。

彼は私を好きになんてならない。

ゲームで、遊びで近づいた女の子を好きになるなんて、きっと彼の生活を傷つけるだけだ。それに、すきになってもらえるような努力だってしてこなかった。いつだって私は、与えられることを受け入れるだけでいっぱいいっぱいだ。

それでも、彼が好きで、仕方がないのだ。すきが溢れて、可能性なんてなくても、どうにかして近くにいてほしいと思ってしまう。

きっと私の事なんて好きになってもくれないだろうに、少しでも気を引きたくて、先輩のすきなものをすきになろうとしてみたりする。