無名ファイル1


「魅香…次はいつこっちへ来られる?」

私は澤田さんからの電話をうけた翌日、

空港で姉に抱き締められていた…。

「今度は姉様が日本においでよ、
沢山おもてなしするから!!」

「ありがとう、そうしましょう…。」

泣きそうな顔をしていた姉の頬を、

そっと手で包み込むと姉は少し笑った。

私の手の温もりを確認するように、

自分の手を重ねて目を閉じる…。

「…魅香、いってらっしゃい!」

「いってきます!」

姉様…ごめんね、ありがとう。

姉は優しい笑顔で見送ってくれた。

これだから私はシスコンなのだ。

…にしても、蛍の体調が良くないとは。

通話では全然気がつかなかったな…。

これは…流石アイドルと言うべきか。

澤田さんによると蛍は寝不足で、

少しやつれている様子なのだそうだ…。

仕事はいつも通りで健康が心配だとか。

姉に勧められた小説のページを捲り、

コーヒーを一口含む…。

「熱っ…」

私は小さく溜息をついて小説を閉じた。

すっかり見慣れたネックレスに触れ、

ほんの少し頬を緩ませる…。

普段は飲み頃まで待てるコーヒー。

私…落ち着きないなぁ。