無名ファイル1


あれから私は姉と沢山の話をした。

話せなかった期間を取り戻すように、

姉からは家族の話も聞いた…。

それに比例して蛍との通話は増えた。

日本に帰国する2日前のこと。

とうとう本当に帰りたくなって、

荷造りをしていた時に電話が震えた。

「…魅香、電話出ないの?」

小説を読む姉が不思議そうに問う。

蛍との通話も日常になりつつあった。

今更、通話前の一呼吸なんて無い。

「…知らない番号だ」

姉は気味悪そうに眉間に皺を寄せて、

私の携帯を机に伏せて置いた。

携帯はしばらく振動して止まり、

また数分してブルブルと振動を始める。

「出てみるね…」

「えっ。」

私は意を決して通話ボタンを押した。

しばらく無言が続く…。

「…もしもし?聞こえてますか?」

「どちら様?」

優しそうな声色にピシャリと返答。

あ、日本語だ…それに…知り合い?

姉が心配そうにこちらを見ている…。

「あぁ、良かった…繋がった。
僕、ホタル君のマネージャーです!」

ホタル…?ホタル…あ、蛍の!!

「澤田さん!何故、私の連絡先を!?」

澤田さんは言いにくそうに話を始めた。