「そういえば、魅香の旦那さん、
アイドルなんでしょう?やっぱり、
忙しい?今の時期はテレビとか。」
だ、旦那!?私の教材をめくりながら、
平然と言う姉を二度見しかけて留まる。
「いや、別に旦那…では無い。
休みは無いって言ってたなぁ…」
即座に訂正して相槌を打つ。
あーあ…今頃何してるのかなぁ…。
「会いたいなぁ…。」
「なっ!?」
私をにんまりとした顔で見つめる姉…。
「…って思ってるでしょう?」
思考を読まれたかとヒヤリとする。
こ、これが噂の女の勘ってやつ…?
私は銀髪の毛先を指先で弄りながら、
小さく頷く…その瞬間携帯が震えた。
「…もしもし」
「もしもし、声が聞きたくなった。
今…時間大丈夫か?…魅香。」
姉の生暖かい視線はムズムズするが、
愛しい声が鼓膜を揺らすのが心地良い。
「私も蛍の声…聞きたかった。
早く蛍に会いたいなぁ…」
気がついたらそう口走っていた…。
携帯越しに息を呑む音が聞こえる。
「なんてね!とにかく仕事頑張れ!」
「ちょ、待っ…」
勢いよくバイバイと言って通話を切る。
携帯を持つ手が微かに震えていた…。



