外国語が飛び交うグローバルな空間。
私は大荷物を床に置き、溜め息をつく。
ここはオーストリアの空港…。
「うぅ…私、話すの苦手なのにぃ…」
夏の長期休暇を利用して家族の元へ。
そう思っていたんだけど…。
もう…最悪、迷子になっちゃった…。
「仕方ないか」
私は自力で家へ向かうことを諦めた。
空港のカフェでコーヒーを頼んで、
暫くの間ボーッと思考を巡らせる。
3日前…あの時の首筋へのキスは、
今だにじんわりと熱を帯びている。
「熱い…」
私は蛍の視線を鮮明に思いだし、
カフェの中で一人、悶えていた…。
「お久し振り、気分はいかが?」
背後から懐かしく、優しい…温かい声。
私は無性に泣きたくなってしまった…。
「お久し振りです、元気です。
姉様は…如何ですか??」
私の声に姉も驚いた様な喜んだ様な、
とにかく顔を歪ませて私を抱き締めた。
「お帰りなさい!…お帰り…魅香!!」
「ふふっ…姉様、苦しいですよぉ…」
ぎゅっと私を包み込む優しい腕。
本当は苦しくない…むしろ心地良い。
少し前まで忘れていた温もりに、
私はそっと体を預けた…。