無名ファイル1


『ギィィィッ』

重そうな扉の向こうは普通の広い空間。

ダンスやヨガが映えそうな大きな鏡、

部屋の隅には大きなピアノ…監禁って、

雰囲気は全くない部屋だった…。

「…監…禁??」

「ぶふっ!!冗談だっ…。」

プルプルと肩を震わせて笑う蛍。

「はっ!べっ、別に本気にしてない!」

蛍は暫く大爆笑していた…。

ホタル君ファンの皆さんご覧ください。

ドS系男子を気取るアイドルの本性を。

超、悪戯っ子のお茶目さんです。

「ここ、防音室なんだね!!」

「歌とダンスはここで練習してる。」

へぇ…だから広々してるんだねぇ。

うちの防音室は楽器に父の楽器で、

元々狭い部屋は足の踏み場がない。

…えらい違いだな。

「ピアノ…貴方のお父様の物?」

「あぁ、父さんが使ってた物だ。
というか…今の言い方、懐かしい。
教養のあるお嬢様、箱入り娘的な。」

蛍がピアノの鍵盤に指を滑らせる。

その指先が妙に色っぽい。

「…弾けるの?」

「多少はな…作曲もするし。」

そうだ、ソロ曲は蛍が作詞作曲だ。

ピアノの音色を奏でる指先を見ながら、

出合った日のことを想った…。