帰りの電車に揺られながら蛍の、
彫刻のような横顔を思い出していた。
何を…考え込んでいたんだろう。
「何かあった?」
「ひぇ!!いぃや!?」
いや、まぁ一緒に電車に乗ってるし、
聞こうと思えば聞けるんですがね!!
「魅香、今から家に来ないか?」
彼の首筋を流れる汗に釘付けになり、
ごくりと生唾を飲み込む…。
「え!?いや、私はいいけど…」
忘れるな、蛍はアイドル。
何もない私とは違うんだって…。
「…夏休みは仕事詰めで魅香と、
会えないって唐突に気づいた。」
あ…さっきの考え込む顔。
なるほど、仕事の事考えてたんだ!
そりゃあ、写真集の1ページ的な、
美しい表情にもなりますわな!!
「だから台詞合わせを口実に、
魅香を家に連れ込もうかなと。」
閑静な住宅街を歩いている時、
囁くように言われて私は想わず、
蛍の脇腹を肘で小突いた。
「誤解を招くような言い方しないで!
誰が聞いてるかなんてわからないし、
ファンが聞いたら嫉妬で倒れるよ?」
「大丈夫、レンとは違って俺には、
ガチ恋してるファン比較的少ないし。」
比較的…信憑性の無い言葉だ。



