無名ファイル1


「全体の内容、舞台の照明音響の指示、
どれも明確な表記で良かったと思う。
ただ結末、黒崎はもっと上手く書ける。
再会する展開は賛成。新曲は考える。
癪に障る言い方をしたなら悪かった。」

蛍の言葉に目を見開く麗菜…と、一同。

書き直せからの称賛に全員が困惑。

まばたきを繰り返した。

「いや、話すの下手くそか!?」

私の突っ込みに周囲がホッと笑いだす。

殺伐とした空気が和やかになった。

良かった…麗菜の台本全否定では、

なかったんだね…いや、紛らわしいわ!

「じゃあ内容が確定したシーン、
演出をみんなで考えよう!!」

活気が戻った教室は笑顔に溢れる。

元気の無い麗菜に私はどうするべきか、

分からずにただ背中を見つめていた。

『黒崎ちゃん!月乃ちゃんの衣装ね、
デザイン考えたんだけど生地がさー?』

「…えぇ、見せてくれる?」

それを見越してか衣装担当の子が、

麗菜に声をかけるのを見て安堵した。

着々と話が進む中、蛍は微動だにせず、

台本を見つめている…。

もしこれが一億の価値がある彫刻です!

…なんて言われたら多分私は騙される。

そんな雰囲気…。