初夏…蝉の声が響く…背中に嫌な汗。

「月乃魅香!!」

「…はい」

今日が夏休み前最後の登校日…の予定。

渡された通知表をほんの少し開いて、

片目でそっと中身を確認する…。

「…よ、よし…セーフ!!」

ホッと胸を撫でおろした。

評価が悪かったら補修だもんなぁ…。

「みんな通知表受け取ったな!
よし!じゃあ、解散!!さようなら!
夏休み羽目を外し過ぎるなよ!!」

先生が豪快に笑って教室を後にした。

先生が見えなくなるとみんな一斉に、

教室の中心に集まって顔を見合わせる。

「…昨日徹夜して完成させたわよ。」

麗菜が死人のような顔でニタリと笑う。

手には一冊の分厚い台本…。

『おおおおおっ!!』

教室は歓声に包まれた…。

これは文化祭の舞台の演目、

”月光の恋文”の台本。

そう、蛍のソロ曲が原作の舞台だ!!

「ヒロイン!!台本デース!」

ヒロイン…あぁ、今から胃が痛い。

取り敢えず礼を言って受け取る。

「相手が野郎は納得いかないデース。
ワタクシのヒーローとか如何デース?」

「こら、喧嘩を売らない!」

私はエミリアの額にデコピンをした…。