『野苺学園、入学式を始めます。』

『代表挨拶、夏夜君。』

「はい。」

えっ、えええッ!?!?

代表挨拶って学年主席ってこと!?

そりゃ…人の学歴いじりも出来るわ!

夏夜君がマイクの前に立つと、

周りの生徒がざわつく…特に女子。

『待って、ホタル君じゃない!?』って。

有名なのかな。まぁ、美形だもんね。

うん、わかる…王子様みたいだよね。

いや、でもさぁ…。

いつまでも静まりそうにない声の波。

夏夜君は居心地悪そうに俯く。

その瞬間何かがあたしの中で切れた。

「静粛に。」

体育館に冷たく硬い声が響く。

空気は凍り、場は静まり返る。

仕舞ったと思った時にはもう遅かった。

周りはあたしを冷たく凝視する。

はっ!?…やっ、ちまったぁ!!

「…ふっ」

夏夜君は少しの間呆気にとられたが、

強張っていた表情は微笑に変わっていた。

その表情があまりにも美しくて、

あたしはただ、彼に釘付けになった。

「では挨拶をさせて頂きます。」

その後、入学式は滞りなく進んだ。

周囲に変人と認識されたあたしを除いて。

「久しぶり、さっきは勇敢だったわね。」