「準備できたか?」

私は髪飾りと指輪を確認して頷く。

蛍は私の様子を見て嬉しそうに笑った。

チェックアウトの手続きを終えると、

二人はホテルを後にした…。

「学校…間に合うかなぁ?」

運転が再開した電車に揺られ、

ポツリと呟く…蛍はうーんと唸った。

「…三時限目の途中参加か?」

二人で登校したら…変かなぁ。

でも一人で登校は勇気無いから、

蛍と一緒じゃないと無理だけど。

今日からノーメイクで学校へ行く。

あたしはメイク好きだけど、私は違う。

偽りすぎた自分はもういない…。

鏡の前で理想を創る必要はない。

「あ、着いた…じゃあまた後で!」

「あぁ。」

改札を出て一本道を走り抜ける…。

優しく、温かい風が頬を撫でる。

月乃魅香は私であたし…。

どちらも否定したら可哀想だよね。

だって…月乃魅香は月乃魅香だから!

「たっだいまー!!」

誰もいない家に私の元気な声が響く。

制服を着て、短いスカートが踊る。

お団子を結い直して後れ毛を巻いて、

コーム型の簪を挿し込んだ。

「完璧っ!!いってきまーす!!」

首もとのネックレスが揺れた…。