無名ファイル1


暗闇の中、彼の体温と呼吸を感じる。

「…あっ、ちょ…そこ、触らないで」

「しぃっ、夜中だ…静かにしろ。」

意地悪く笑う蛍の息が鼓膜を揺らす。

藻掻くものの、手首を抑えられていて、

思うように抵抗できない。

「ひっ、あっ…」

背中を指先でなぞってここはどう?と、

あたしの耳元でわざわざ聞いてくる。

「どっ、どうって…」

蛍の香水の匂いが鼻をかすめる。

腰がビクリとはねた。

「もっ、むりぃ…ッ、きゃははっ!!」

もうダメ、ずっと我慢してたけど、

くすぐる指がプロすぎる!!!

これは兄弟のいる指使いだわ!!

「ほら、降参か?」

「降参降参!!ごめんって!」

蛍は電気をつけるため、体を起こした。

あたしが服を掴むと困ったように笑う。

「魅香と俺は根本的に体格差がある。
さっきだって動けなかっただろ?」

「あたしだって蛍じゃなかったら、
意地でも起きたまま夜を過ごすよ!!
当たり前じゃん…馬鹿にしてんの?」

暗闇の中、緊張で震えるあたしの声が、

微かに空気を揺らした…。

「んっ…」

優しい感覚…唇にそっと触れる温度。

暗闇と静寂が心地いい。