無名ファイル1


「ちょっとお手洗い行ってくるね。
髪整えないと…もしもナンパされたら、
助けてって大きな声出すこと!!」

あたしが満身創痍でも形振り構わずに、

助けに行くからと肩をポンと叩いた。

「心強い申し出…非常に有り難いが、
全てこちらの台詞なんだよな…。」

行ってこいと、ヒラヒラと手を振る蛍。

何をしても絵になる…流石八頭身。

お手洗いの姿見の前に立つあたし…。

バッグからジェットコースターに乗る時、

取り外した髪飾りを手にする。

髪飾りは黒を基調としたコーム型の簪で、

暗闇の中に月や星が輝くのを連想させる。

大人の髪飾り…。黒いから銀髪に映えた。

「…王子様はセンスもいいのか」

あたしはお手洗いを後にした。

「おーまった…せぇ…」

あの人だかり…嫌な予感しかしない。

ツギハギ兎の噴水前に人がたくさん…。

あれはただの記念撮影とかじゃない。

「…ふぅ、」

あたしは少し離れたところで深呼吸。

彼のもとへ歩みを進めた。

「おまたせ、行きましょうか。」

人波を抜けて真っ直ぐ彼に声をかける。

「あぁ、次はどこへ行く?」

二人はサッサとその場を離れた。