「…友達だと思ってたのは、
あたしだけ…?蛍は友達じゃない?」

あたしの言葉に正面に座っていた蛍は、

ゆっくり立ち上がった…。

「手を握るのは友達だから?
…手の甲にキスを落とすのは?」

椅子に腰かけていたあたしの手を引き、

立ち上がらせ、淡々と触れる…。

「抱き寄せて…髪に指を滑らせて、
こうして…耳元で愛を囁いても…?」

耳に蛍の息がかかる…熱っぽい視線に、

くらくらする…溶けてしまいそう。

「…なんてな。」

パッとあたしから手を離した蛍…。

心臓が…五月蠅い、早鐘を打つようだ。

「ふっ、驚かせて悪かった。
そんなに警戒しなくていい。」

蛍はにこっと笑ってあたしの頬を撫でる。

優しいその手にあたしはひどく安心する。

「ただ、少し意識してくれたらいい。
俺は男だ…お前をいつでも喰らう。」

顎をクイッとあげられ、視線が絡む。

獣の様に鋭く、それでいて雅な視線。

それ以降、何を話したか覚えてない。

緊張しすぎて会話どころじゃなかった!

「じゃあ、戸締りしろよ?また明日。」

ドアの音と共に膝から崩れ落ちる。

熱くなった頬を手のひらで包んだ…。