「………引いた?あれが…女装で。
こんな男が”ケイちゃん”で軽蔑したか?」

やっと重たい口を開いた夏夜。

小さくて…消え入りそうな声だった。

「引かない!性別なんて関係ない!!
ケイちゃんは私の大切な友達だもん!」

あたしは彼の手を包む様に握りしめる。

彼は少し呆気に取られた顔をして、

それからホッとしたように微笑んだ…。

「ありがとう。」

呆気に取られた顔、昔と変わらない。

なんだ、こんなに近くにいたんだね…。

「外は暗いし危ない、家まで送る。」

倉庫を出るとすっかり日が落ちていた。

彼は怪我だらけのあたしを気遣って、

サラッと背負って歩き出す。

「え!?待って、重くない!?」

「重くない、さっきも…言っただろ。
俺は男だし、お前の体重くらい余裕。」

むしろ軽い、飯食ってるのか?なんて。

あたしはデリカシー無いな!!と言って、

彼の頬を軽く引っ張ってやった。

夏夜はあの時の華奢な体型ではない。

小鳥のさえずりのような高い声でもない。

でも私の大切な人で…初恋の人。

あたしは彼の背中に体を預けながら、

優しい想い出と夜風を感じていた…。