「あ!真由ね、体育委員なの。
旧体育倉庫の道具を運ぶように、
先輩に言われて…手伝って?」

保健室の帰り真由さんが手を合わせた。

ジャージの袖は彼女には少し長くて、

つまり萌え袖。そんな細かい可愛げが、

男子人気の理由だ…女子には不評だが。

「いいよ」

あたしはこの時気づくべきだった。

体育祭はもう閉会式を残すのみ。

使用した道具を片付けることはあれど、

持ち出すというのはおかしいと。

そして”旧”体育倉庫だということ。

『ガチャン!!』

気づいた時には背後で施錠された音。

「え…真由さん?」

「…あははっ!こんな罠に嵌るとか!
てか、真由の名前気安く呼ばないで。
ここで反省してなよ、死ぬまで。」

背筋が凍った。

必死に辺りを見回すと上の方に小窓が。

「登る…しかないな」

体に力を入れるたびに包帯に血が滲む。

歯を食いしばって高く積み上げられた、

埃っぽいマットを登る…。

「…んぐっ!!」

最後の力を振り絞り登り切った時、

思わず膝から崩れ落ちた。

「…届かない」

小窓は想像より高い位置にあったのだ。

私はしばらく動けなかった…。