ほんの一瞬だけ…目を放した私達は、
女の子が走った先には何もなく、
誰もいなくなっていることに、
驚きが隠せなかった…。
「…狐に化かされた?」
「普通に考えてテーマパークに、
狐はいないと思うけどな…。」
でも現に女の子と繋いでいた手は、
ほんのり彼女の体温を帯びている。
不可解と表現する以外にこの状況が、
説明することができない…。
しばらく呆然としていると、
雨が止んでいることに気がついた。
おもむろに傘を閉じると、
先程まで空を覆っていた分厚い雲は、
吹き抜けた風とどこかへ消えている。
「虹…」
空を見上げるとくっきりと鮮やかな虹。
私達はそれ以上女の子については、
模索することはやめた…。
ただ、彼女が両親と再会して、
幸せであることだけを願う…。
「ねぇ、またツギハギ劇場見に行こ!
今の時期は冬だけの特別ストーリーが、
公開されてるんだって!!」
「いいよ、お土産は最後にしよう。」
雨が上がり、傘一つ分の距離が縮まる。
女の子を介して繋いでいた手は、
彼の手をしっかりと握っている。
いつもよりも特別な温もりを感じた…。



