無名ファイル1


急な変わりように驚く私達…。

しかし、よく考えたら行き先で、

両親に会えるんだよという重要な事を、

この女の子に伝えるのを失念していた。

なんだ、最初から伝えておけば、

あんな骨の折れる過酷な冒険も、

経験することなかったなと思う。

「落ち込んでるか…?」

喚かなくなった女の子の様子に、

蛍はやっちまった?と女の子の顔を、

そっと覗き込んでいた…。

「落ち込むというか…決意したのかも。
迷子センターで両親と会えるなら、
早く会って愛を確認しないとって。」

昔の蛍みたいに親に真っ直ぐ確認する。

…そんな健気な姿が容易く想像できる。

「…え、この子は女の子だよな?」

「いや、普通に女の子だよ、
女子トイレに入ってたでしょう?」

誰だって親に私のこと好き?って、

質問はするものでしょう…。

「あ、あの建物が迷子センターだ」

私達はやっと目的地近くまで来られた。

「あっ!!ママ!」

女の子がパアッと表情を輝かせ、

私と蛍の手を離して走り出す…。

その瞬間、ぶわっと冷たい北風が、

勢いよく吹き抜けて私達はほんの一瞬、

女の子から目を放した…。