無名ファイル1


いわゆるこの子はイヤイヤ期だろう。

見た目は天使なのに喚く時は、

悪魔にしか見えない…今この一瞬、

迷子センターに連れて行くだけで、

私も蛍も疲労困憊である…。

女の子は蛍がお気に入りなようで、

手を掴んで断固として離そうとしない。

一体あの小さな体のどこに、

走り回るパワーを蓄えているのか。

パーク内に人が一人もいなければ、

小脇に抱えてでも抱き上げるだろう。

しかし少なからず人がいる…。

泣きわめかれて誘拐と思われたら最悪。

「これが…デートか…壮絶だな。」

「そう思うなら何か知恵を絞って!」

女の子がどうしたら真っ直ぐ歩くか。

「やはり食い物か?」

仕方なく金平糖をバッグから出した。

「ねぇ、このキラキラ…欲しくない?」

「…ほしいぃっ…ちょーらい!!」

女の子が泣きそうな声で懇願する。

「私の手から離れないであそこの、
大きな建物まで行ったら一個あげる。」

時給スタイルだ…年俸スタイルよりは、

モチベーションもあがるのでは?

やっと解放された蛍が溜め息をついて、

関節をバキバキと鳴らしながら、

少し後ろをついてきていた…。