「着物…嫌いだったの?」

蛍は黙って立ち止まった。

冷たい風が私達の間を吹き抜ける。

蛍の表情は見えない…俯いていた。

「…蛍の覚悟が決まるまで待つよ?
それか、キスして情報を掴もうか?」

私は蛍の正面にスッと回り込んで、

蛍の顎をクイッと指先で持ち上げた。

驚いた顔の蛍とバチッと目が合う。

「ふっ、それ根に持ってた?
悪かったって、謝ってるだろう?
それに俺には大した話は無いぞ。」

そんなことを言っている間に、

人気な初詣スポットに到着した。

「人…凄いね。」

「じゃあ、参拝で並んでる間に、
ちゃちゃっと話してしまうか。」

私達は取り敢えず最後尾に並んだ。

「さて、何を聞きたい?」

「なんで着物を嫌いになったのか」

私が間髪入れずに答えると、

蛍は少し困ったように笑った。

「誰も嫌いだなんて言ってない。」

「いや、生放送の衣装が着物だって、
蛍に言った時に一瞬だけ眉間に皺が、
クッ…って寄ってたもん」

よく見てるな、と悪態を突かれつつ、

私は蛍が話を始めるのを待った。

「物心がついた時から女物の着物を、
何の疑問もなく見に纏っていた。」