無名ファイル1


「え…待って、何その物体。
新種の生き物?アメーバ?」

汚物を見るような冷たい目で、

私の絵を見つめるホタル君。

「えっ、いや、想像力を働かせて!
君ならきっと感じ取れるよ!!」

「えぇ…?」

『いや、マジでなんだこれwww』

『画伯wwww』

『ホタル君がんばれー!!!』

『スライムじゃない?知らんけど』

チャットは大いに賑わった。

超不本意だがなァ!?

…とまぁ、私だけ絵が最悪だった。

そういえば中学の美術の成績は、

いつも1だったなぁと今更思った。

「さぁ、トークに移りまーす!!」

「絵しりとり、妙に白熱したな。」

ホタル君がくつくつと笑った。

絵しりとりは絵が下手な奴とやると、

面白いんだな?と追い打ちをかける。

「うーん…魅月はまず立方体を、
描けるように練習しましょうね。」

落ち込む私の頭を撫でながら、

優しく私の空間認識能力のなさを、

全国に発信した…悪意はない。

「ふはっ、え!?そこから!?」

はい、私はもうノックアウトです。

これ以上戦えません!!白旗っ!

「小学生の図形の単元から、
黙ってやり直してきます!!」