そしてここで二人で作り上げた歌が、
流れ始める予定だった…が、
何やらトラブルが起こったようだ。
蛍がイントロの部分を口ずさむ…。
私もそれに合わせて歌い始めた。
もうここまでくれば怖くない。
何度も何度も試行錯誤して作った、
妥協も忖度もない二人の歌…。
曲が流れないくらいのハプニングは、
私達には造作もない事だった。
恋の色形は人によって様々だ。
どの形もどの色も間違ってはいない。
悪くはない…ただ不意に周りと比較し、
落ち込んで、羨んで…一喜一憂する。
一人では疲れてしまうだろう。
でも貴方と一緒ならば慌ただしい、
そんな感情の変化すらも…愛しく、
幸福を感じて受け入れてしまうだろう。
…という内容の歌。
綺麗な愛だけを詰め込んだ歌ではない。
だから多くの人の共感を得る。
劇が終わると体育館が割れそうなほど、
大きな拍手と歓声に見舞われた…。
舞台袖で高鳴る胸を押さえて放心する。
ハプニングばかりだったけれど、
まぁ、終わり良ければ全て良しってね。
隣にいる蛍とバチッと視線が絡む。
『お疲れ様』
声を揃えて互いを称えた。



