順調に文化祭の劇の準備も整い、
とうとう文化祭前日となった。
クラスの全員で衣装や音響、照明、
台詞に立ち位置、話のテンポに流れ、
全ての項目の最終チェックを終えた。
『よし、明日は成功させるぞォ!!』
『おぉぉぉおっ!!!』
みんないい顔をしてる…きっと私も。
ドキドキ胸が高鳴っている…。
明日の今頃はこの体育館の舞台で、
沢山練習した演技をしているんだ…。
温かい照明の中、影が近づいてくる。
手を差し伸べて少し首を傾げる…。
「俺と踊って頂けませんか?」
「喜んで…」
ヒューッ!と観客席の方から聞こえる、
賑やかなクラスメイトの拍手喝采…。
『ハッピーエンドはまだ早いぞ!
一目惚れ拗らせバカップルゥ!!』
「ははっ、うるっせぇ!!」
軽快な音楽にステップを踏みながら、
蛍が観客席に向かって言い返す。
その会話に周りも笑顔になる…。
なんて温かいクラスなんだろう。
その時、私は気が付けなかった。
暗い観客席の方の端に一人、
私を冷たく睨む視線があることに。
その一人の行動により明日の本番が、
窮地に追い込まれるということも…。