「…だからホタルって呼ばれてるのか。
可笑しいと思った、ケイって読むのに」
「…へぇ、なんで知ってるの?」
麗菜ちゃんは心底不思議そうな顔。
そりゃそうだよね、話せば長くなるな。
「生徒手帳を見…せてもらった!」
「ふぅん、仲良いのね…最初は驚いた。」
最初…とは多分入学式の日のことだろう。
「おじさん、コーヒーおかわり下さい。
あー、あれ人見知りじゃなかったの?」
あたしが笑うと麗菜ちゃんは少し、
ムッとした様子であたしのケーキの、
てっぺんに輝く主役をひょいッと取った。
「酷い!!苺を一口で!!」
「おいしー。」
鬼ィ!!悪魔ァ!!と騒いでいると、
店員があたし達のテーブルの前に。
「おまたせ致しました、コーヒーです。」
「…!!」
あらあら…顔を赤らめる麗菜ちゃん。
店員は綺麗な金髪で長身が格好いい、
カフェの一人息子である。
言わずもがな、彼こそが噂のレン君。
本名は霧島怜治、レイジ君だ。
「久しぶりだな、麗菜。…あんた誰?」
「幼稚園以来だね、魅香だよぉー!」
霧島君は少し考えた後、首を捻った。
…ピンと来なかったようだ。