絶望しているようにさえ見えた。

この歌が完成しなければ、

生きる価値が無いと…思ってる。

このまま放っておいたらこの人は、

気を病んでしまいそう…。

「”月光の恋文”も…嘘?」

「違う!!!それはッ!!」

視線がバチッと繋がる…。

「違う…あれは…嘘じゃない。
心からの言葉と大切な想い出を、
メロディーに乗せたんだ…。」

「ねぇ、まだ時間は充分あるよ。
この歌を作る為の言葉がさ、
今はまだ少し足りないんだよ。
お互いをさ…もっと知ろうよ…。
話したい事、色々あるんだ…私」

蛍が黙って頷いたのを確認すると、

彼の隣に座って鍵盤に指を滑らせた。

「なんだ、ピアノ弾けたのか。」

「うち音楽一家だよ~?お忘れ?
ピアノは必修科目みたいなもん!」

そう…毎日好きでもないのにさ、

何時間も練習して。大嫌いだったな。

「母の前で音楽の話はタブーなんだ。
なんと言っても、父親があんなだから。
自分の家族よりピアノ大好き人間。」

「あー、うちは両親がどっちもそう!
音楽の実績でしか人を褒められないの。
結局は不器用なんだよねぇ…」

不器用なだけ…頭では理解してる。