「雑誌の撮影とバラエティーの収録、
それからボイトレの予定です。」

「あの、私一般人ですし…そんなに、
丁重に扱って頂かなくて大丈夫です」

現場に近づくほど場違い感に、

息苦しくなり、堪えかねて告げる。

「そんなこと…」

「あっれぇー??ホタルきゅんの、
マネージャーさんじゃないですか♡
お疲れ様ですぅ、ってことはぁ!!
ホタルきゅん現場にいるんですか?」

背後からの身に覚えのある猫撫で声に、

ぞわわっと鳥肌が立つ…。

「栗田真由さん…お疲れ様です。
我々、急ぎですので失礼します。」

「えーっ、待ってくださいよ。
それ新人?初見なんですけど!!
初めまして♡貴方は名前は?」

グイッと腕を掴まれる…うわぁ、

こんな細い手のどこにこんな握力が?

笑顔を絶やさない彼女にゾッとする。

体育祭の一件を思い出した…。

「申し遅れました、香乃魅月です。
半年振りの音楽活動復帰の話を、
澤田マネージャーとしていたんです…」

口からデマカセ…こんなハッタリが、

よくもスラスラ出てくるものだと、

我ながら驚く…勿論周りも驚いている。

香乃魅月の顔は誰も知らないから。