エミリアの唾を呑む音がした…。

決して近い距離じゃないのに。

「スゥー…ハァーッ…どうぞ。」

大きな瞳とバチッと目が合った…。

廊下の窓から差し込む熱を持った光。

首筋を伝って流れる汗の滴…。

バックから出した箱の時を刻む音。

「エミリア、ごめんなさい。
あなたの気持ちは受け取れない。」

エミリアはやっぱりねといった様子で、

穏やかに微笑むがポロポロと大粒の、

涙を溢した。こんなに近くにいるのに。

私には拭ってあげれない涙…。

「ワタクシ…魅香を好きになって、
本当に良かったデース!!幸せデス。
…これからもワタクシと友達として、
仲良くしていただけないでしょうか?」

そっと差し出された白く小さな手。

指先は相変わらず震えている…。

「勿論…こちらこそっ…よろしく!!」

手をそっと握り返すとほんの少し、

温かく…柔らかかった。

「夏夜君は図書室デース!」

ドキリと心臓が跳ねる。

「魅香の考える事はお見通しデース!
魅香が気持ちを伝えられるように、
良い知らせを聞けることを願います。」

「…ありがとう!」

温かい言葉に背を向け、走り出した。