「あんたには関係ない、要件は何?」

「全くせっかちなのは昔からだね。」

サドは一枚の紙を手渡してきた。

IDとパスワードの書かれたものだ。

「このアカウント…消さなかったの?
…死んだことにでもすればいいのに。」

「そんなことはできないよ。
君の歌声は人々から評価されている。
半年もファンを待たせていたんだよ。
車の前で待っていて…収録しよう?」

アコーディオンを奏でながら微笑む。

僕の車…勿論覚えているでしょう?と。

「私、もう歌わないから。」

「え?」

…妖しく眼光がギラリと光る。

人を従わせる…独特な瞳。

人間の上に立つ者の特有の空気感。

「君も僕の期待を裏切るの?…座れ。」

「…座らない、長話する気は無い。」

少し前の私ならば屈していただろう。

「ふぅーん?」

奏でていたアコーディオンを、

荒々しく机に置いて私の首を鷲掴んだ。

「んっぐ…!!やめっ…苦しッ!!」

「声、出ないようにしようか?
僕の期待に応えられない君の声なんて、
必要ないよねぇ…捨てちゃおうか?」

グググッ…と手に力が込められてゆく。

恍惚な表情を浮かべるサド…。