「はいはい朝からご馳走様〜」


テキパキと可動式テーブルをベッドにセットして朝食トレーを置いた


「お邪魔しました〜」


最後まで茶化した岡部さんは
病室から出る寸前に

視線を合わせて片目を閉じた


「・・・ありがとうございます」


昨日、涙が止まらない私を
慰めて諭してくれた岡部さんのお陰で

気持ちに素直になろうと思えたのだ

小さく溢した声は大ちゃんも気づいていて


「皆んな蓮の味方だな」


頭をポンポンと撫でてくれた


「なんだか子供扱いされてるみたい」


少し拗ねてみると


「蓮は小さいからな」


含み笑いの大ちゃん


「背、伸びたよね?」


「あぁ、あの頃からだと二十センチくらいかな」


百八十センチはあるということだろう


「一番デカくなったのは永遠
その次が俺と亜樹」


大ちゃんの口から懐かしい名前が出た


「飛鳥さんから亜樹と永遠の話を聞いたよ?」


「そうか」


「永遠が保健の先生と婚約して
亜樹が新しく出来た妹さんの友達と付き合ってるって」


「ザックリした説明だな」


「え?違うの?」


「平たく言えばそうだけど
その二人の話は奥が深くてね?
真相は話して聞かせられるけど
答え合わせは東白に戻ってから自分で確かめた方がいいな」


「そっか、なんか離れてる間に
色々あったんだね」


「だな」


「大ちゃんは?彼女とかいなかったの?
ほら、駅前でも囲まれてたのは大ちゃんって聞いたよ?」


「ふーん」


ついでのように聞いただけなのに
一気に病室の温度が下がった


「・・・っ」