「まっ・・・っんんっ」


待ってと言おうとした唇は
簡単に塞がれて

徐々に深くなる口付けに
酸素が足りなくて頭がボウとする


・・・死んじゃう


大ちゃんの胸をトントンと叩くと
最後にリップ音を立てて唇が離れた


二人の間に光る糸が繋がって・・・切れた


間近で微笑む大ちゃんの唇は濡れていて
それをペロリと赤い舌が舐めとる

その妖艶な仕草ひとつで
胸がトクンと跳ねた


「蓮」


「ん?」


「東美辞めて東白《うち》に来ねぇ?」


「へ?」


大ちゃんの突然の問いかけに固まる


「やっと手に入れたのに
月に二回しか会えないとか拷問だ」


「・・・」


確かに東美への進学は大ちゃんから逃がれるために選んだもの

それが無くなった今は
それも二人を引き離すことになる

でも・・・東美と他の学校とでは
基本的な学習カリキュラムが違う

だから転校は出来ないと思う


大ちゃんは質問に答えず考え込んだ私を腕の中に抱き込むと


「俺に任せてくれねぇか?」


また全て理解したかのように囁いた


「任せる?」


「あぁ、全部俺に任せてくれたら
蓮の悪いようにはしねぇ」


小学校の時とは明らかに違う
自信たっぷりの大ちゃんの声に

もしもダメでも任せてみようと頷いた


「サンキュ」


閉じ込められた腕の中は
仄かにシトラス系の匂いがして
胸がドキドキと騒がしい


それなのに


「蓮、甘い匂いがする」


クンクンと鼻を近づける大ちゃんに
恥ずかしさが膨らんだ


「やだぁ」


「クク、可愛い蓮」


大ちゃんの甘い言葉が耳元で聞こえた次の瞬間


病室の扉が大きく開いた


「蓮ちゃん朝ごはんよ〜、えっ」


朝食のトレーを持った岡部さんと
ベッドの上の私を抱きしめた大ちゃんの視線が交わった


「「・・・っ」」