話し終わると暫く考えていた飛鳥さんは


「あの人の所為だったのね」


そう言うと一瞬眉間に皺を寄せて


「えっと、ごめんなさいね
その、蓮ちゃんに会って失礼なことを言ったのは私の兄なの」

深くため息を吐いた


「・・・っ」


「勘違いしないで?兄とは言っても
父と再婚した人の連れ子だったから
私とは何の繋がりもないの」


“兄”だと言ったのに繋がりがない?
またも疑問が頭を過ぎる

飛鳥さんはそれに応えるように


「父が再婚した時には兄は成人していて養子縁組もしていない
もちろん、私も成人していたから父の娘であること以外
兄とは全くの他人、ただ、父が呼び方のことだけ煩かったから“兄”と呼んだだけのことなの
それに、兄ができた原因の父と再婚相手はもう亡くなっているから
本当に全くの他人なの」


“兄”の説明をしてくれた


でも、全くの他人だと言っても
あの日は大ちゃんの家に居た


「あの日ね、突然自分の娘を連れてやって来て
『娘を許嫁に』って居座り続けてね
私が瑞歩と結婚してから何とかうちに取り入ろうと画策し続けたダニみたいな奴だったわ」


学校から帰った時、和哉さんが守るようにしてくれたのも
部屋から出ないようにしたのもそのためだった


「蓮ちゃんはうちの家のことって
どのくらい知ってる?」


「えっと・・・」


実のところ噂話以外では何も知らない


「実はね、郡《こおり》の家は白夜会に属するの」


「それは聞いたことがあります」


「郡は白夜会のニノ組と呼ばれる陰の仕事をする“郡夜組”
大和はその郡夜組の跡継ぎなの
誠さんは郡夜組の“目”と呼ばれる情報収集をする役目の人で
山之内は何代も前からずっと郡夜組を支えてくれているの」


あの日のあの人の言葉が
漸く理解できた